「友達なのかな、ボクらって」
彼女がそう呟いた時、僕はなんと答えたか、それだけが思い出せなかった。
言われた時、何もかもがひっくり返りそうだった。
友達なんじゃないの?
敵対してるんだから友達なわけなくない?
言葉で言い表せない関係だよ。
そんな言葉が頭の中に浮かんでは消えて最終的に言葉にしたのは何だったのか。言われた彼女はなんと返したのか、そこら辺の記憶が曖昧だった。
もちろん本心はどれでもない。
『友達のままで終わりにしたくない』が本心だ。
僕は彼女のことが好きで、あわよくばというより絶対に自分のモノにすると決めている。
だから友達でいたくない。それ以上の関係性を求めている。
でも、どう言ったっけ、どう返したんだっけ。
僕の言葉を聞いて、なんと彼女は返してくれたんだっけ。
そんな疑問を抱えながらいつもの演奏会の為にピアノに向かうと彼女が待っていた。
「やぁ、権力者」
そう言って僕が微笑むと、少し面食らった顔をした後言った。
「……………………バカ」
「……何が」
「………………昨日自分が提案したくせに」
「…………何の、話だい」
「いいよ、君がそうならそれで。思い出すまで悶々としてろ」
酷く不貞腐れた様子で彼女は言った。
顔が赤いような、なんとなく拗ねているような態度の彼女を少し撫でると彼女は言った。
「…………友達のままじゃやだって。好きだって言ったくせに」
「…………………………え!?」
7/24/2024, 3:34:22 PM