「流れ星に3回願いを唱えると叶うらしいけど、私、流れ星を見たことないの」
すでに経験済みだと思っていた君好みの出来事はまだ未体験だった。流星群を見たことある俺に質問が飛ぶ。どれくらいで消えてしまうのか、3回も言えそうか、どうすれば見られるのか色々訪ねられたが俺から言えるのは
「ゆっくり唱える余裕はなかったな」
故郷で兄弟たちと見上げた流星群は星があっちこっちに落ちていきそうだった。幼い弟なんて家が潰されるんじゃないかって泣き出したんだ。
流れ星に関しては短かったり長い光の筋を目に捉えたかと思えばすぐに消えていってしまう。3回なんて余程短い願いじゃないと言えなかった。実際、兄弟の中で言えたものも誰ひとりとしていなかった。
「そっか」
「心を込めた1回でもいいんじゃないかな。それか練習するとか」
「練習」
「俺の武器、忘れちゃった?」
俺の武器は弓。流れ星の速さには敵わないが、流れる線を描くことは可能だ。スッと消える表現は確か、似ていたはず。
「場所はそうだな…。草原がいいかな」
草原の夜空に矢を放ち、それから君の願いに耳を傾けるんだ。『流れ星に願いを』しなくたって俺が叶えてあげられるかもしれない。
4/25/2023, 11:51:00 PM