「ありがとう、ごめんね」
拾った小鳥は、まだ小さくて怯えていた。
優しく撫でながら「大丈夫、大丈夫」と声をかけていると、小鳥は少しずつ安堵した表情へと変わった。
そんな小鳥との出会い。
偶然なのか、必然的なものなのか。
次の朝になると、何かが窓をコンコンとクチバシで叩く音で目が覚めた。
時間は、午前7時前である。
スマホで確認した時間と同時に、布団から顔を出す。
すると、昨日出会った小鳥が、こちらを向いてチュンチュンと鳴いている。
「ごめん、今起きたよ。ほら、ご飯だよね?」
そう言って、引き出しの中に隠していた木の実などを取り出した。
小鳥は待ちきれんばかりに、飛びながら家の中に入ってきた。わ、わっ、と私が変な声をあげていると、私の掌の上で、小鳥が無我夢中で木の実を食べていた。
「なんだ、お腹空いてたのか。可愛い奴め」
なんて思いながら、小鳥の背中を見ていた。
──その後、なぜか私の記憶が無い。
ハッとして我に返った時には、小鳥を土に埋めていた。
しかも、ズタズタに切り刻んだ状態のまま。
思わず、その場で嘔吐しそうになった。
だが、これがもし、相手が小鳥でなければ、一体私はどうなっていた?
殺人事件として逮捕?
それとも、今のように証拠隠滅を図る?
嫌な感じだ。
ああ確かこの感覚、前にも感じたことがある。
両親が喧嘩ばかりしていて、ムカついた私が、殴り殺したこと。
女性が?って思ったでしょ。
本当にあるんだよ、私みたいに人間というものを超える奴が……とまぁ、私のことはいい。
両親の件もあって、ちゃんと罪を償った。
人里を離れて、そして、一人で生きていくと決めていた。
なのに、またこんな──……
「ううう、ごめんなさい」
でも、小鳥の表情を見たら、なんだか安らかな死を迎えたように思えた。
もう大丈夫だよって、無理しないでねって言われているみたいで、涙が零れてきた。
「ありがとう。それと、ごめんね」
そう言った私は、小鳥に手を合わせた。
もう二度と罪は重ねない……そう決めたからこそ、私はまた、遠い夢を追いかけることにした。
12/9/2023, 4:57:09 AM