Yushiki

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『愛があれば何でもできると、貴方は思いますか?』

「答えはノーです」

 私は強い意志を込めて言い放つ。

 目の前に横一列にずらりと並んで座る面接官は、みな同じような無表情でじっと私を見つめていた。そのうちの一人が再び私に問い掛ける。

『何故そう思うのでしょう?』
「愛は移ろいやすく、無限ではないからです」

 椅子に腰掛けていた私は、背筋をきちんと伸ばした。顔を上げて真っ直ぐに正面を見据える。

『なるほど。では貴方は永遠の愛というものを信じますか?』

「それは、分かりません」

『愛は無限ではないと、先ほど仰ったのに?』

「だって永遠の愛とは、誰かの愛と誰かの愛がちょうど重なり合ったことで生まれる奇跡ですから。私はただ何事もひとりきりで貫くことは困難ではないかと思ったのです。誰かに芽生えた愛とは、向けた相手が自分に何かを齎してくれるから続くのではないですか? 齎されることにより有限な愛が補われ、互いに補い合い続けられたら、それが永遠の愛として何かを成し遂げる力になると、私はそう思うのです」

 私が語る説明に、やはり目の前の面接官達はぴくりとも表情を動かさなかった。



【愛があれば何でもできる?】

5/17/2023, 4:54:09 AM