君が頷く姿が眩しくて、隣の窓が見られない。君はそっと僕の家へ映り込む
いらっしゃい。
君は踊るように家事をする。
そんな君を、ソファーから眺めるのが好きだ。変に思うだろうか
君に渡せない花束を僕は君が映る出窓へさす。日常のことだ。
都会暮らしの僕たちは挨拶を交わす程度の仲でしかない。
(ドアのノック)
おかえり
僕の愛する妻だ。
互いに歳を重ね、色んなことを経験し
ようやくたどり着いた恋だった
妻とは、何故か愛へ変わることなくずっと恋しいままだ。
そんな、僕の幼い心を見透かされているのか、気づかないのか
妻は、まめに花瓶の水を変え花を枯らさない。僕は、実は・・・とも、
本当は・・とも
何も言えないまま、妻の笑顔に笑顔で返す
日々だ。雨の日は、姿のみえない君へホッとする。
妻だけを見つめる日だ。
そんな幸せな日を、妻は憂鬱そうに外を眺める。暗い顔だ。
何か気の利いた話はないかと、頭で考えるが浮かばない。
そんな時、妻が笑った
困った僕は、思わず出窓をみる。
花瓶の横に、新しい植物が並べられていた。どうやら、僕は失恋したようだ
翌朝、晴れた眩しい出窓には、二人の踊る姿が映った。
妻は、嬉しそうに葉っぱと花に話しかけた。そんな妻に、ありがとうさえ言えない僕は、出窓用の新しいカーテンを探しに一人街へ繰り出すのだった。
隣が映らない、遮光用のカーテンに変え、
また妻に恋をしよう・・・。
愛をこめて
7/31/2025, 10:33:43 AM