【優しさだけで、きっと】
君の声が聞こえた。
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優しい声だった。波一つない水面に、そっと触れるように、大切な物を、そっと、大事に両手で包むように、
壊れ物に触れるかのように、そっと、優しく。
そんな声と喋り方だった。
なぜそんな喋り方をするのかは分からなかった。だが…、
何故かそれがとても心地よかった。
君の薄い唇から音が漏れた。空気が震え、僕の耳まで届いてくる。柔らかい音だった。
人を包み込むような、そんな音。
あの時の僕は、社会の逆境というものを知らなかった。
今、あの子の声を思い出すと、何も言わずとも、優しく黙って辛いことを聞いてくれてるような気がして、
目から1粒雫が落ちて、それは次第に雨になる。
あの子は今、どんな生き方をしているのだろう。
5/2/2026, 2:20:01 PM