小絲さなこ

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「一緒の帰り道」


家が近くだからって、陽が落ちてくると危ないからって、幾つも理由をつけて、君と一緒の帰り道。

たぶん周囲にはバレているのに、君にはバレていないとか、鈍すぎやしないか。

ついゆっくり歩いてしまいそうになる。
あぁ、もうすぐ別れ道。
名残惜しくて、こっそりと見つめてしまう。
この気持ちを伝えても、君は戸惑うだけだろうな。


小さく手を振る君。
頷いて、歩き出して、振り返る。
ドアを開ける君を見届けて、歩き出す。

またひとつ、季節が進む。
ひんやりとした風。

卒業まで、あと一年と数ヶ月。
進路のことは、考えないように、話題にしないようにしている。
きっといつか、次に会える日がいつなのか、わからなくなる時が来るかもしれない。
『それぞれの道』ってやつ。

それを思うだけで、息が詰まりそうになるのに、まだ時間があるからと、今日も伝えられないまま。

たったひとこと。
幼い頃は、何も考えずに言っていた。
どうして今、これだけは言えないのだろう。

その理由ばかりを探し、君の鈍さのせいにしている自分に嫌気がさす、ひとりの帰り道。



────別れ際に

9/28/2024, 3:09:17 PM