とうか

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寂しさが凍る前に

また、氷った果実が流れてきた。
「なぁじいさん、1日何回も流れてくるこいつらは何なんだ?」
少年は隣の切り株に座っている老人に訊いた。
「そンなこと言ってないで、はやく掬ってやりなァ」
老人は答えない。少年はため息をついて、果実をすくって、まとめて籠に入れた。そして水の音に見送られて、ふたりは閑静な森を歩いていく。沈黙が続いていた。
小屋に着くと、老人はさっそく鍋に湯を沸かした。少年はいつもと同じように、すくった果実たちを鍋に入れていく。そして氷が溶けるまで煮込むのだ。
「なぁ、そろそろ教えてくれてもいいんじゃないか?俺はもう、ここに来て1ヶ月は経つぜ」
老人はロッキングチェアに座っていた。口は開かない。
「おい、この火にかけるのだってなんか意味あんだろ
。俺はそれをちゃんと知ってやるべきなんじゃないか」
少年は老人の目を見据える。観念したように、老人は話し出した。
「───そいつらァはな、死んだ人だ」
「は?」
「心をもう戻れないとこまで、自ら凍らしちまった人だ。ホントはなァ、こうなる前に、お前さんみたく社会の中に孤独を感じたら、勇気だして逃げ場所探したり、もしくはァ誰かが凍りそうな心を溶かしてやらんといけねェんだが……お前さん、そいつらを凍ったまま食べて見ィ、冷たく刺すような、叫びが聞こえそうな味がするさ。だから最後にこうやって心を解かして、美味しい料理にするンだ」
少年はその日、いつもと同じように作った果実のタルトが、いつもと味が違うように感じた。


12月20日『寂しさ』

12/20/2022, 11:08:23 AM