どうしたらいいの?
今私は究極の選択を迫られています。
でも私には選ぶことができません。
誰か助けて―
――――――――――――――――――
先程、私はお腹に強烈な痛みを覚え、近くにあった公園のトイレに駆け込みました。
それが危機的状況の始まりだったのです。
というのも、その個室には紙がありませんでした。
人間の尊厳の危機です。
紙のようなものが入っていないか、カバンを探りますがありません。
解決方法を考えていると、どこからともなく声がしました。
「赤い紙いらんかね。青い紙いらんかね」
なんてことでしょう。
なんと妖怪、赤紙青紙です。
赤い紙と答えると血まみれになって殺され、青い紙と答えると血を抜かれて殺される、恐ろしい妖怪です。
もちろん私には死ぬ予定はありませんので、答えるわけにはいきません。
だからと言って、尊厳の死は避けたいところ。
背に腹は代えられないため、このまま個室の外に出て予備のトイレットペーパーを取りに行くしかありませんでした。
しかしそこでも問題が起こりました。
なんと人が来たのです。
しかもこのトイレは、個室が一つしかないので、他の個室に入るのを待つということができません。
しかも彼女は個室のドアを開けてくれと懇願するほど、危機が差し迫った方です。
紙を持ってきてくれと頼んでも、彼女はそれどころではなく声が届きません。
そして後ろからは、赤紙青紙声が聞こえます。
もはや猶予はありませんでした。
この状況を解決するには、時間を止めて気づかれない内にトイレットペーパーを持って来るしかありません。
しかし私は時を止めることなどできません。
私はパニックでした。
どうしたらいいの?
誰か助けて―
その思いが天に伝わったのか、神が降臨しました。
「あのー。掃除したいんですけど、どういう状況なのかしら、これ。どうしたらいいの?」
清掃員さんでした。
「紙下さい!」
すべてを察した清掃員さんは、紙を投げ入れてくれ、無事個室から脱出することができました。
また清掃員さんに、妖怪がいることを伝えると鮮やかな手際で除霊されました。
さすがはトイレのプロです。
ドアを叩いていた女性も無事に間に合いました。
私は清掃員さんに礼を言い、その場を去りました。
しばらく歩いてから、ずっと清掃員さんのことを考えていました。
清掃員さんの勇姿が頭から離れないのです。
この気持ち、もしかして恋!?
私、どうしたらいいの?
11/22/2023, 9:33:19 AM