私はやっと思い出した。彼は、小さい頃家の近くに住んでいた、幼なじみだ!
「何やってんの?」
思わず声を張り上げた。道でいきなり肩をたたいてくるなんて、人違いだったらどうするつもりだったんだろう?人ごとながら心配になってしまう。
改めて顔を見ると、幼い頃の面影はそのままに、青年らしくがっしりとした骨格に変貌している。逞しい肩や背中が、会わなかった期間の長さを感じさせる。
悪びれないニコニコと無邪気な笑顔に、私は思わず微笑み返した。昔から、なんだか憎めないところがあるのだ。あるいは友達の思い出は、美化されるものなのかもしれない。
「どこ行くんよ?」
「ああ、合気道の稽古だけど…。」
私は肩にかけた杖袋を指しながら答えた。一般的には杖イコール合気道ではないが、私が通う道場では、かなり杖型に力を入れているのだ。
【友達の思い出】
7/6/2023, 10:07:20 AM