不特定多数

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病室

隣の部屋の唸り声と絶叫が夜10時を知らせる。何を言っているかまでは分からないが、とにかく哀れだと思った。
隣人も、叫びたくはないだろう。ただやるせなくて、どうしようもなくなってしまうのだ。きっと。
そのまま叫び声をバックグラウンドにして、目を瞑る。夜は心が蝕まれるような感じがして早く寝てしまおうと思うのだけれど、妙に目が冴えて、天井と瞼の裏を交互に見ている。
ここに来てから、寝付けないとき祖父を思い出す。病室で寝たきりになっていて、最後の方は意識があるところさえ見れなかった祖父を。
私が思い出すのは決まってその最後の方で、暗くて、静かで、沈痛としている病室。そこで祖母や父母が先生と何か話していて、私は気まずくって端っこで黙っていたところ。
それと、棺の中の祖父と別れたところ。悲しかったはずなのに泣けなかった自分に、子供心ながら引いていたこと。
白い部屋で一人で寝ていると自分が異物になったようで、そんなことを思い出す。
自分のことばかり、と自嘲しても虚しくて、私も叫んでしまおうか、なんて。

8/2/2024, 6:21:21 PM