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こいをした


黄ばんで、黒鉛で汚れて、なのに一ページしか書かれていない。どこにでもある様な日記に唯一書いてあった文字。何かを消した跡もない。ただひたすらに汚れて、めちゃくちゃになっているだけ。
なのに、なのにさ。

「コレが遺書ってのは、ねぇんじゃね?」



それは、暑い暑い夏の夜
—————————————

 俺がアイツと出会ったのは、一年、いや2年前くらいのこと。お祭りの縁日で、紅と白の浴衣を着て、金魚掬いを何回も、何回も繰り返していた。
俺はじぃちゃんの屋台を手伝っていて、毎日のように顔を合わせたものだ。

「なぁ、その金魚、どうすんだよ。」

「ん?金魚救いのこと?なんで?」

アイツはいつも此方の話を聞かないし、意味がわからないといった風に笑っていた。

「家で飼いきれないだろ、その量じゃ。
言っとくけど、川に流すとかはホーリツイハンなんだからな。生態系にも悪いし」

「んー、でも一応選んでるよ?」

「まあお前上手いからな...あと、柄選ぶのは当たり前だろ。出目金とかもあるし」

「そういうのじゃないんだって!もっと奥が深いんだよ。もう。わかってないなぁ!」

「そんなん、分かりたくもねぇよ。」

で、俺も笑ってたんだ。アイツといると、楽しかったから。今ではもう、言えないコトだけど。



「という回想を涼はひたすら繰り返し、初恋の女の子を思い返すのでした。ちゃんちゃん!
いやぁ、いつ聴いても面白いわ!ナイス!涼〜」

って揶揄うな!!

冷房の効いた部屋で、昨日の事を振り返っていた矢先にコレを言われた俺は、大分忍耐力がある方だと思う。

この兄貴の類ほど、妄想力が逞しいやつはいないんじゃなかろうか。いつ人が初恋なんて言った。なぁ?
る〜い〜く〜ん、な〜あー!?!?

「そもそもアイツ、男だって言ってるだろ!
あと、今度は何持って帰ってきやがった!
このクソバカ兄貴野郎」

「いーじゃんいーじゃん。面白いしさ。
それに、俺がトレジャーハンターやってるお陰で、涼は面白い土産話、俺の物語を聞けるんだから。」

「家事、バイト、してるの俺だぞ。
ついでにあんたが持って帰ってきたイグアナ、ヘビクイワシ、ヒクイドリの雛の世話をしてるのもな。」

「いーだろー、可愛いし。でも、今回はお前用に知り合いから貰ってきてやったんだぞ。
ほら。誕生日おめでと。」

「兄貴...!じゃあ、なんで水槽で、中に鯉が泳いでるんだろうなぁ!?」

「かわいいから!俺コイ好きなんだよね〜」

俺だって、わかってる。

夏休みに入る直前、担任から見せられた一冊のノート。
祭りで会って、仲良くなったアイツが失踪した事を聞かされた。遺言状と書かれた封筒が机の上にはあり、俺にこのノートを渡すよう、指定してあったらしかった。

アイツには、もう二度とあえない。
わかっていてもそりゃ落ち込むし、兄貴が察して構ってくるのも、今はやっぱり辛いんだ。

「なぁ。コイト」

兄貴が連れ帰った鯉には、コイトという名前がついた。
ネーミングセンスはなかなかではないかと自負している。俺と兄貴は、兄弟である。

コイツはアイツによく似ていた。錦鯉で、よく泳ぎ回って、広い水槽のあちこちにいる。

アイツの名前は糸だったから、なんとなく、連想できて自分を慰めれるのも丁度良かった。










オチとしては、あの日記の文章はこいをした→鯉をすることにした。
というメッセージを主人公の涼に伝えるためのもので、魚を先祖にもつ糸(アイツ)は人、何かの魚。と将来の姿を選べる種族で、鯉になることにしたので飼って!というお願いでした。兄貴さんはそれを知ってたのかな?まぁ食えない人なのは間違いないですね。
その後の展開としては涼がそのことに気づいて、一悶着あった後ハッピーエンドです。

ただ、書く予定は未定なので、結末を載せました。
リハビリ代わりに一発書きして、最初はオチも決めていなかったので、多分こんな感じになる..かな?っていうものです。自分の事でつぶやく感じにしようかとも思ったけど、やった事ないし小説の方が書いてて面白いしね。
お題って大事!!

2/7/2024, 4:10:45 PM