風がひゅうっと吹くここは、昔よく友達と遊び呆けた裏山だ。ぽつんと、開けたこの場所にベンチが悲しげに設置されている。
私は、そぅっとベンチに近づき、夜景を静かに眺める。空には、輪郭がはっきりとしない満月が、私を見下ろしている。また風が吹いて、体が冷えてきたので、フードをすっぽりと被る。
「…なんで、ここにいるんだろ」
ふと、そんな言葉が、口からこぼれ落ちる。
もちろん、拾ってくれる人なんてここにはいない。
いつもなら、私の大事な人が隣にいるのに。今はいない。
ベンチから立ち上がって、目の前にある柵に身を乗り出す。そして、ゆっくりと冷たい空気を吸って、思いっきり叫んだ。
学校も、家族も、みんなみんな、大嫌いだ。そんな思いを乗せて。どうせ誰にもこの声は届かないのだから、別にいいでしょ?みんなみんな、自分のことに精一杯。他人の声に聞く耳をたてない。
「ねぇ、私1人になっちゃった。あなたのせいだよ」
貴方が1人で逝ってしまうから、だから私はこんなに苦しいんだ。
あなたは、私に生きて欲しいと言ったよね。でも、もういいでしょう?あなたも知ってるでしょ?家族のことも、学校のことも、私のことを理解してくれたのは、あなただけだったもの。
はやく逢いたい。私の話を聞いて欲しい。
「あなたじゃなきゃダメなんだよ」
喉から絞り出すように出た言葉。この言葉と同時に出てきたのは、涙だった。
9/18/2023, 1:38:36 PM