スティーブ・R

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 乗り込むと真っ直ぐ後部座席へ向かう彼の背中を、追いかけるのを途中でやめた。一番後ろから二つ前、タイヤの分少し高い二人掛け。そこへ腰を落ち着けた彼の、呆気にとられた目に見つかったのは、斜め二つ前の座席に鞄を下ろした時だった。
「隣座らないの?」
 天気予報と同じくらいの重みだった。
 学校では互いに別の群れに属していて、それぞれの太陽を中心に回っている。(彼はどちらかと言うと、太陽の方だけどね)たまにだけ、軌道が交差することがある。今日がその日だった。
 足並みを揃えて、同じ方向に進みはじめた時、同じバスに乗るということは──と考えたけれど。なんかそれは違うだろ、となって一つの座席を分け合うのを却下したのが冒頭だ。
 ロマンチックな事情は一つもなく、また、二人の間にそれがもたげるのを期待している訳でもない。ということは、瞬きの間、たっぷりと黙りこんで考えている自分の方こそ変なのだろうか。
 閉まる扉の空気が抜けるみたいな音に「じゃあ」なんて呟いた声がかき消されるのを感じながら、彼のいる席の一つ前に居場所を決めた。
 二人を乗せたバスは、夕焼けで赤く染まる表通りを滑り出す。




届かぬ思い

4/15/2026, 11:41:36 AM