江戸宮

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彼女と過ごしたと言ってしまったら語弊が生まれてしまうだろうか。
一緒にケーキを買いに行って準備室でそれはそれは楽しく食べて過ごしたクリスマスイブ。
そんな前日とうって変わってクリスマス当日は当然のように仕事に追われていた。
いくらやっても減らない資料の山に小さくため息をつく。
本当にこれ今年中におわるのかな。無理じゃない?

「んふ、お前大変そうだね珍しく、」

頭の中でグルグルとネガティブなことばかり考えて居たら目の前に紙パックのミルクティーがふってきた。
正確には嫌味とともにだが。(彼はこういう言い方でしか励ませないのを知っているから特段気にもしないが)

「びっくりした……貴方っていつも突然よね」

「俺が突然なんじゃなくてお前がいつもボーッとしてるの。それで?なんでそんなに溜め込んでたのさ、珍しいじゃん」

相変わらずの暴論だ。
いつも俺に無関心な顔をしてるのに急に話しかけて来るんだから、貴方って俺の心臓に悪い。
でもその自分本位な言い方の中に心配という気持ちが含まれている事も俺は知っている。
伊達にこの人のケツを追いかけてない。

「……たまたまだよ。俺だってそういう時ぐらいあるし」

「嘘つけ、何年お前と一緒にいると思ってんの?…まぁ、言いたくないなら別にいいけどさぁ、俺はこれでもお前のこと心配してんの…分かってる?」

「うん…、ありがとう…」

ずっと尊敬していた人にいざ言葉にされるとなんだが気恥ずかしくて目が合わせられない。
恋を知ったばかりの生娘じゃあるまいし。

「じゃあさ今日、飲みに行こうよ。可愛い後輩の話聞きたいなぁ、ねえいいでしょ?」

「…ぁ、はい。もちろん……」

「へへ、やったね!じゃ、それ早く終わらせるんだぞ」

用は済んだのかぴゅーっと風の速さで自分の席に戻ってしまった。
距離を測りかねていた憧れの先輩。
一緒に酒を飲み交わす約束をする日が来るなどあの日の俺は想像もしなかっただろうなぁ。
ひとまず、クリスマス1人の寂しい成人男性の図は回避された事だし山のような資料をどうにかしよう。
積もる話は沢山あるわけだから。


2023.12.25『クリスマスの過ごし方』

12/25/2023, 1:54:15 PM