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地下鉄の駅から地上への階段を登りきると、外はサアサアと音を立てて雨が降っている。

こんな時に限って折りたたみ傘は、家でお留守番している。

折りたたみ傘の役立たず。
こういう時の為の折りたたみでしょうが。
何、家で休んでるんだよ。
今日は非番じゃないよ、出番だよ。主役を守る助演だよ。良い役じゃん。今すぐ来いよ。
ほら、あんたという存在が輝く雨が、絶賛満員御礼雨あられって降っているんだから。
今すぐここに来いっ。

家に忘れたのは自分だというのにそんな事は綺麗に棚に上げて、鞄の中にいない折りたたみ傘に八つ当たりする。
八つ当たりすれば少しは気が楽になるかと思ったのに、全然ならない。
折りたたみ傘も悲劇よね、入れ忘れた自業自得な私に罵られて。あぁ、可哀想。可哀想よ。

でもね。

天気予報では雨の確率0%だったのよ。
わかる?ゼロよ。無いってことよ。
だから、折りたたみ傘なんて鞄に入れる訳ないでしょう?…は?日傘として持ち歩く人もいる?悪かったわね、持ち歩かない系女子で。
荷物重いの嫌いなの。箸より重いの持ちたくないお嬢様なの。
何よ?お嬢様に見えない?はぁ〜?目ぇ腐ってんじゃないのあんた!
ていうか、マジ時間ヤバいんですけど。
このままじゃ、遅刻確定しちゃうから。
行くよ、走るよ。
風邪引く?五月蝿いわね。女は気合と度胸なのよ。

誰とも知らない奴と脳内で問答という名のケンカをしつつ、私は雨の中を走り始めた。


通り雨は、大抵10〜20分程で止むことが多い。
もし、通り雨にあって時間があるのなら雨宿りをオススメする。
何事も時間とゆとりを持って…。
…この物語の女性には届かないか。

9/27/2023, 11:58:05 AM