神木 優

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 作家を目指して早十数年。三十路手前の僕はこの人生の分岐点について色々考えることがある。
 普通に恋人を作って、普通に就職をしていたら、普通の人生が送れたんだろうか? 
 作家ではなく、作家に費やした時間全てを楽器にしたら、そこそこ売れるバンドマンになっていたんだろうか? 
 そんな人生もあったのだろうが、多分作家という茨の道を進むことを選んだ僕に、後悔の二文字はなかった。
 イフの物語を考えることは好きだ。
 あの時ああしていれば、なんて人生で腐る程考える。
 それが僕の小説のネタの大半だ。
 
 そんなことはさておき、今一番欲しいものは何かな? と、散歩中に自称神を名乗る存在に出会う妄想をしたことがある。そう問われたときに、僕はなんて答えるのだろう?
 遊んで暮らしてもお釣りが返ってくるほどお金?
 人を導く事が出来るほどの影響力?
 それとも、死んでしまった友人を生き返らせる?
 不老不死?
 そんなシチュエーション、物語の中だけだよ、と笑う人がいるかもしれないが、現実に起こるやもしれない。
 でも、欲しいものと、急に言われて思いつくわけもなく、卑屈に過ごしてきた人生と、作家になりたいという間で苦悩して、僕はこう答えてしまうのだろう。

「売れない作家になりたいです。作家になれるのであれば、僕は喜んで苦悩の奴隷となりましょう」
 
 

7/21/2024, 10:57:10 AM