スープ

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彼女の言葉は、さよならの前にはふさわしくなさすぎた。二年前に死んだ母の、ポテトチップスはコンソメが好き、なんて最後の言葉よりもよっぽどあほらしかった。母の話は、しなくていい。大好きな人だった。勿論母のことだ。いなくなった彼女のことじゃない。あんな人のことははやく忘れたい。だけど、できない。昔バレーボールをやってた頃に言われたことがある。失敗したプレーの一つ前を振り返れ、それが失敗の原因だ。彼女の別れは何かの失敗だったのか。その一つ前だから彼女の言葉が忘れられないのか。本当に忘れられない。言葉だけじゃない。うん。いや、こういうのって野暮なやり方だな。忘れられないのは、忘れようとしてないからだ。結局彼女がいなくなるのがずっと怖いままなんだ。自分の前から、自分の思い出の中から。もういいんだ。あれこれそれって指事語ばかりの回想もしまいにして、ちゃんと終わりにしなきゃ。今までありがとう。それじゃあ、おはよう。さよなら。

さよならのあとのちいさなやり取りのあとのほんとのさよならが好き  山﨑修平

8/21/2023, 6:03:04 AM