しば犬

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閑静な住宅街の隅、そこに佇む小さな喫茶
レトロな雰囲気とジャズが流れる店内
カランと店の扉が鳴る
ジャズのテンポに重なるブーツの音
やっと来たようだ。
腰まである黒い髪
赤いジャケットに黒のショートパンツ
モデルのような体型と強めのメイクは街を歩く人の目を引くことだろう...

「...すみませーん、いつものコーヒーお願いします」
彼女は店に入るやいなや注文をマスターにすると
僕の目の前に悪びれる様子もなく座りニタニタとした顔でこちらを見ている
「...はぁ、先輩呼び出しておいて遅刻ですか?」
「いやぁーすまない。だが君はこうして待っていてくれた。」
気持ちの籠っていない言葉を羅列してく先輩。
「まあまあ、今回も君の力が必要でねー手を貸してくれないかい?」
「そんなことだろうと思いましたよ。でもこの前みたいなのはごめんですよ...あーいうのは僕には向きません」
「あははははは!!!あれは、傑作だったな。でも私はとても似合っていると思っていたけどね」
運ばれてきたコーヒーをすすり先輩は話を続ける

「君は、知ってるかい?
『本当に美味しいコーヒーは甘い』と」
突拍子もないことを言うのはいつもの事だが
「コーヒーは、苦いものですよ。でも先輩、本当なんですか?」
「あぁ、本当だともコーヒー好きのイタリア人が言うんだ!間違いない」
「なるほど...僕が知らないだけで本当なんですね」
「私は、君のそういう純粋で人の話を受け止めるところは好きだよ。だが、この話に納得するには早いぞ
『コーヒー』と言ったが『ブラックコーヒー』とは言っていないし
イタリア人はエスプレッソを好む。山盛りの砂糖を添えてね。事実と真実は異なるってことさ」
なるほど、ニタニタしていたのはこういうことかと合点が行く。
「さて、本題に移ろう...今回の事件は面白いぞ」
これまでの話は前振りかよ...と呆れつつ
先輩の顔がまじな所をみて僕は脳を切り替える
「先輩、話すのはいいですけど...マスターが入れてくれた美味しいコーヒーを無駄にするんですか?」
「おや、コーヒーが冷めてしまったね...マスターおかわりお願いします。
じゃあ、次はコーヒーが冷めないうちに話すとしよう」

そう言ってデータファイルを僕のスマホに送り話を切り出した

「この案件、僕には荷が勝ちすぎてませ?」
「そんなことない、君じゃなきゃだめなんだよ...元米軍最年少エーススナイパー。ウィリアム・テルじゃなきゃね」

9/27/2025, 6:34:12 AM