『年末は実家に帰るの?』
ぼんやり外を眺める私に、彼はそう問いかけた。
「うん。終業式のあとそのまま駅に向かって新幹線に乗るよ」
そう答えた私の顔を見ずに彼は言う。
『じゃあクリスマスは一緒に過ごせないね』
私たちは恋人ではない。
だけど、その言葉に含まれる好意に
私はこのとき気づいてしまった。
『雪が降ったら、ここに残る?』
私の地元は、雪が降らない。
ホワイトクリスマスに憧れる、と
私が以前話したことを彼は覚えていたのだ。
「…雪が降ったら、ね」
雪が降るのは毎年1月半ばだ、と
彼が言ったことを私も覚えていた。
12月23日。
終業式の朝、窓の外の街は
うっすらと でも確かに雪に覆われていた。
異例のことだった。
『想いが強すぎたな。笑』
教室に入った私に、彼が笑う。
私は言葉を紡げずに、苦笑いで返した。
『心配しなくても、夕方には溶けてなくなるよ』
そう言って、今度は彼が苦笑いする。
天気予報は今日からずっと太陽のマークで
今日は暖かくなりそうだった。
私よりも ずっと大人な彼は
ありがとう、も
ごめんね、も
私に言わせることはなく、ただ一言小さく呟いた。
『今夜も、雪が降ればいいのに』
【雪を待つ】
専門学生の頃の話。笑
懐かしいなぁ。彼は元気だろうか。
今も、[先生]してるのかな。
12/15/2024, 1:23:42 PM