質に入れた、好みの小袖がなくなってしまってから、琴子は茂太のことを、しょうのないような、情けない目で見るようになった。
秋分の節分の頃のことだった。
夜もすがら、お座敷に出る琴子は、白粉の肌を光らせながら舞を舞う。
扇子で、顔を隠しながら舞う舞踊は、どこか艶かしい。
手拍子で、それを見つめるご贔屓に、琴子は秋波を送った。
座敷の奥では、志乃さんが三味線を弾いている。
その音に合わせて舞う琴子の足運びは、洗練されていた。
もう、舞子になって十年は経つ。
年季の入った、古年増の琴子の顔には丹念に紅が刺してあった。
2/17/2024, 1:03:29 PM