白糸馨月

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お題『友達』

 俺は魔法で自分の分身を三体ほど作り出した。それぞれに違う服を着せて、違う帽子をかぶせる。
 これから俺が行くのは、テーマパークだ。ジェットコースターも観覧車も、メリーゴーランドも、お化け屋敷も楽しめる。こういうところに行くのに一人じゃさすがに浮くからだ。
 卒業前に学年全体でテーマパークへ行くっていうのがあって、俺はクラスに友達が一人もいない。誰からも誘いがかからない。だからこうして自分の分身を錬成している。
 テーマパークの前まで来て、俺は気合を入れる。魔法の勉強ばかりで、『友達は勉強の邪魔だ』と親に言われて育ってきた。こういうテーマパークも実は行ったことがない。
「よし、行くか」
 と俺が言うと、異口同音に俺の分身が同じセリフを口にし、同じように頷く。この時点で雲行きが怪しくなる。
 それでも気にしないようにしながら先へ進む。
 最初はメリーゴーランドだ。と、ここで問題が発生する。
 なんと、同じ馬に四人で乗ろうとしたのだ。俺はどうにかして、一人ずつ係員の人と協力しながら引き剥がして一人一体ずつ馬に乗せる。俺達のことを笑いながら写真におさめようとする者が何人かいたが、気にしないようにした。
 ジェットコースターに乗るときも同じ現象が起きた。ジェットコースターは楽しめたが、まったく同じタイミングで同じ叫び声を上げられるのはなんとも言えない気分だ。
 そのあと、お化け屋敷へ行った。ここで俺は怖い場面に来たら自分の分身に守ってもらおうと思った。だが、結局皆、『俺』なのだ。皆して、誰かを盾にしようとしながら進んでいく。おかげで相当時間がかかったし、怖さも何倍にもなった。
 疲れた俺は四人で観覧車に乗る。お互いに顔を見合わせ、まったく同じタイミングで頷く姿を見ながら
(もっと魔法の精度をあげるか)
 と反省したのだった。

10/26/2024, 3:59:48 AM