千明@低浮上

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朝同棲している彼に衣替えをお願いされてクローゼットから冬服を出した。その際に服の間に隠すように挟まれていた写真を見つけた。私の知らない女の子と、高校時代の彼。私が知らないという事は他校の子なのだろう。寄り添って彼の肩に頭を預けている..。彼の、昔の恋人だろう。同じ高校だったとはいえ、彼の全てを知っている訳ではない。私が知らなかっただけで、他校に彼女がいたのだろう。
別にいい。私だって元彼の1人や2人居た。それなのに、自分のことは棚に上げておいて彼の過去に嫉妬している自分に嫌気がさす。
『高校の時からずっと、オマエの事だけ見てた』
そう告白してきた彼のあの言葉が嘘だったとしても、今、彼は私の横にいる。
その事実があるだけでいいじゃないか。

そうは言っても、一度胸を覆った黒い霧はなかなか晴れてくれない。少し気分転換しようと近くのコンビニまで散歩がてら行くことにした。


♂♀


「ただいま」

帰宅し声をかけるも返事がない。
今朝、今日は何も用事がないから家に居る、と言っていた彼女はどこか買い物にでも行ったのだろうか。
クローゼットは開けっぱなし、服も床に散らかったまま...ふと床に落ちていた写真に気付く。

「....っ!」

コレを見たのか...!昔好意を寄せられていた他校の人に強請られて撮った写真。捨てるのもなんとなく憚られて、やましいことはないのに服の隙間に隠してしまっていたから、勘違いを...!

彼女を探さなければ...!誤解だと伝えなければ‼︎部屋を飛び出してマンションのロビーを出ようとしたところでコンビニの袋を持った彼女と鉢合わせた。人目も気にせずに強く抱きしめた。道ゆく人たちの視線が刺さるがそんな事どうだっていい。

「どうしたの?」

驚き目をまんまるにした彼女が上目遣いで訪ねてきた。最悪の事態でなかった事に安堵してドッと体の力が抜けた。彼女の肩口にぐりぐりと額を擦り付けるとくすぐったいよ、とくすくす笑う彼女の声が耳に届いた。

「ごめん!あの写真はお願いされて一枚だけ撮ったのを、もらって...」
「なんだ、彼女かと思った」
「まさか...!知ってるだろ...」
「何を?」

首を傾げる彼女の顔を両手で包むとふふっと嬉しそうに彼女が笑った。その可愛らしい微笑みに我慢ならずにキスを落とす。

「........俺はずっと、オマエだけだよ。高校の時も、今も、オマエしか見てない」

耳から首まで真っ赤にした彼女が愛おしい。抱きしめても抱きしめても、伝え足りない。俺の彼女への愛は、この重たい感情は、彼女に届いているのだろうか。伝わってほしくて、強く、キツく、縋るように抱きしめると彼女の可愛らしい手が伸びてきて私をふわりと抱き返してくれた。

「居なくなったと思ったの?」
「うん。出ていったのかって、怖かった。あんなの残しておいてごめん...!」
「ううん。でも、やきもち妬いちゃった」
「.....‼︎あ〜〜‼︎かわいいな‼︎」


#衣替え

10/22/2022, 11:42:12 AM