──あなたとふたり。
あいつと私が犬猿の仲だと思っている人間が一定数いるらしい。まあ、そう不思議なことでは無い。
生まれ、見た目、話し方から服の好みに至るまで、似ているところを探す方が困難だ。
家の名を背負わずに生きる姿を羨ましく思ったこともある。多くの友人に囲まれて談笑することに憧れなかったとは言わない。
それでも、生まれを変えることは不可能であって、むしろ恵まれている方だと自覚している。
だから手を取り合ったのかもしれない。
自分の思考とそっくりそのまま同じ人間がいたら恐怖を覚えるし、その人間と話したとして、何も生まれない。自問自答を繰り返すようなものだろう。
何もかも正反対な人間と──あのお人好しに見えて案外冷静な視線で周囲を見つめる男と手を取って、共に生きていくことを選んだのは他でも無い自分だ。
互いに欠けた部分を補い合って、一つのモノのように立っている。
それで良い。
凸凹が擦れ合って、いつしか違いが目にわからないほどになるほどまで共に居ようか。離れることなどないのだから。
……さて、私の唯一。そろそろ真っ赤になった顔を上げてはくれないか。
いつも私ばかりやり込められているから、少し仕返ししようと思っただけなんだったんだが、案外効果があったようだな。
(あなたとわたし)
11/7/2024, 12:58:08 PM