語り部シルヴァ

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『まだ知らない世界』

山を登り始めて数時間が経った。
あと少しで山頂だがもう折り返して帰りたい気持ちもあった。
それでもここまで来たら進むしかない。
そう言い聞かせて一歩一歩足を持ち上げる。

ついに山頂に辿り着いた。
休憩を多く挟んだのもあったが随分と
予定より遅れてしまった。
あまり登山客がいないのもあるが周囲には人の気配が無い。
疲れているが体に休む暇を与えず
指定エリアでさっさとテントを張る。

あらかた準備でができて荷物と腰を降ろす。
足は想像以上に疲労感を覚え暫くは立ち上がれなさそうだ。
お腹も空いて体も冷えている。
用意していたご飯を残りの体力を振り絞って調理し始める。

満腹感、満足感が体を満たしたあと
記憶が飛ぶように眠りについてしまった。
調理器具など諸々そのままで
どこかへ行った心配はいらなさそうだ。
さっきまであった疲労感も
嘘のように飛ぶほど熟睡したようだ。

微睡みから覚めて慌てて時間を確認する。
良かった。まだ時間は来ていなかった。

朝ご飯を終えて食後のコーヒーを準備していると
優しい日差しが身体に呼びかける。
顔を上げると日の出とともに世界が目を覚ます景色が広がる。
登山を趣味にしてからこんな景色を見れたのは初めてだ。

まだまだ奥が深いなと関心しつつ
あの時登りきって本当に良かったと満足感を
コーヒーと一緒に味わった。

語り部シルヴァ

5/17/2025, 10:38:10 AM