"月夜"
いつもの帰り道。
私は重くなった心と自転車をズルズルと引き摺っている
「いつもはちゃんとできてたのに…」
おかしくなった前輪のせいで歩くたびガコンガコンと揺れ動く籠の中にヘルメットを放り投げる
薄暗い夜道の中、役立たずな自分が恥ずかしくなり
そんな気分を紛らわすように呻く
私の情けない声も息遣いも、全て闇の中に霧散する
冷たいハンドルを握り締めながら、うだうだと帰路に着く
どうにかこの恥ずかしい気持ちを振い落としたくて必死に体を揺すっていると夜空に浮かぶ、まあるいオレンジ色が目に入る
一瞬街灯かと思ったが、ただの綺麗な月だった
よく見れば周りに星も僅かに輝いている
もしこれが小説の一節ならば
私はこの月や星々に慰められ、笑って明日を迎えるのだろう
けれども美しいそれらはより一層、私を惨めにした。
遠いところで光り輝き人を幸せにする
まるで私と正反対!
「…う」
手を握り締めると、ハンドルがギュウッと音を立てる。
指先が白く染まり始めるのを感じながらその場に崩れ落ちた
3/7/2026, 12:52:23 PM