かなめ

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私にはお気に入りの桜の木がありました。

とても美しい木で、私は花が咲いていない時も

毎日、その木に会いに行っていました。


ある日、いつものように角を曲がって

すっかりと変わってしまった風景に

愕然としたのを覚えています。

駆け寄ってみると

あの桜の木は丸太にされて横たわっていました。


昨日までの光景とは全く別のものに

なってしまった事を受け入れる事は

できませんでした。


私は、伐られてしまった事

そこに桜の木が存在しない事を

認めないために、その近くに行くのをやめました。


今でも春になるとまた花を咲かせていると

そう思っています。

多分、そこが私の理想郷なんだと思います。


綺麗な風景がひとつひとつなくなっていくと

またそこに行ってしまったのだと

思うようにしているのですが

現実のこの世界はなんてつまらないのだろうと

思うのです。


元は現実に存在していたのに

何時の間にか理想郷へ行ってしまうのは

おかしな話しだなと思います…







10/31/2022, 10:35:13 PM