かたいなか

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「子供のお題は、去年の10月と6月にも書いた」
某所在住物書きは呟き、頭を掻く。お題について考えたいのに頭が働かないのだ――寝不足のせいで。
「『子供のように』と『子供の頃は』だったな」
双方ネタが思い浮かばなくて、当時は大人がギャグマンガばりにポコポコ大喧嘩してるハナシであった。
ならば今年は?

「子供、こども……」
ふわあ、ふわわ。
物書きは何度もあくびで口を開き、息を吐く。
「子供のままで」。子供のまま「で良い」のか、子供のまま「ではいけない」のか。はたまた「自分は/彼は/彼女は」子供のまま「です」なのか。
考えれば色々、幅の広がりそうなお題だが……?

――――――

来客数が少なくて、客層もほとんど常連さんばっかりで、バチクソにチルい私の勤務先に、
バチクソ久しぶりにモンカスが現れて、
今週から正式にウチの支店の勤務になった新卒ちゃんが朝っぱらから標的にされて、
それを見た元モンカスの現モンカスホイホイな常連さん、ゲンさん(70代男性)が、
支店長と結託してものの10分でモンカスを撃退して警察に引き渡しちゃった。

『嬢ちゃん災難だったね』
頭が子供のままでっかくなっちゃったモンカスが、雨降りしきる中連行されてくのを見送って、
ゲンさんは新卒ちゃんにアメを3個、ポイポイ差し入れてくれた。
『気にしちゃいけないよ。2〜3突っ込んだ三連単を外したくらいに考えときゃ良いさ。今日は美味いモン食って美味い酒飲んで、すぐ忘れな』

難癖つけられて、暴言吐かれて、心ポッキリ折れかけてた新卒ちゃんは、
支店長が庇ってくれたおかげで暴力的被害は無く、
ゲンさんが割って入ってくれたおかげで既に精神的にも落ち着くことができてて、
なんなら、モンカスを制裁して自分を助けてくれた二人に、尊敬すら感じてるようだった。

まぁ分かる(自分の新人時代の本店)
わかる(先輩と隣部署の主任による連携プレー)

で、時は進んでお昼休憩。
「ああいう人って、頭の中どうなってんだろ」
付烏月さん、ツウキさんが作ってきてくれてた自家製ホイップマカロンを囲んで、私と新卒ちゃんと、それから付烏月さんとでお茶会。
「付烏月さん脳科学詳しいよね。何か知らない?」

「俺附子山だよ、後輩ちゃん」
ぽいぽいぽい。小さなマカロンを遠慮無く口に放り込んで、付烏月さんが言った。
「ああいうタイプのモンカスの頭の中〜?説明メンドいから、知らないことにしとくよん」

「つまり知ってるんだ。いろいろ子供のままでっかくなっちゃった大人の頭の中」
「『子供のまま』、こどものまま……うーん。やっぱり知らないことにしとくよん」

「3種類のキューブケーキ計6個とプラスアルファの大口発注いかがですか付烏月さん」
「ごめん俺パティシエじゃないよ後輩ちゃん。
でも食べたいならウケタマワるよ。期日と大きさと、味の希望と届け先、一応伺うよ」
「違う。そーじゃない」

モンカスさんの頭の中は、私も気になります。
ちょっと元気になってきた新卒ちゃん、勉強の気配にポケットからメモ帳とペンを取り出して、なんか真面目な視線でもって付烏月さんを見てる。
「で?」
私も付烏月さんに視線を投げたら、
「……参っちゃうなぁ」
説明する側としては相当面倒らしく、キュッと唇を結んで、付烏月さんが首筋をカリカリ掻いた。
「うーんとね。ああいうひとの頭は、子供のままっぽいけど子供のままではなくて、……んんー……。
うん、やっぱダメだ!知らないことにしとく!」

「大口発注の量少なかったの付烏月さん?」
「だから、俺パティシエじゃないって後輩ちゃん」
「ウラガネ?わいろ?」
「説明がバチクソ難しいしデリケートなんだって。そんなに知りたいなら、俺じゃなくて藤森に、教えるのが上手い後輩ちゃんの先輩に聞いてよ」

「アクセスキーかパスコード?合言葉?」
「だーかーらぁー……」

5/13/2024, 3:46:22 AM