すゞめ

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表現には気をつけたつもりですが、事後からの再戦です。
苦手な方は読み飛ばすなどして自衛をお願いします。
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 目でも口でも煽らずにはいられない彼女の激情は、当然、俺にも伝播する。
 その度に迫り上がってくるどうしようもない衝動を、必死になって抑え込んだ。

   *

 まだ熱を孕んだ寝室、乱れた息を整えながら彼女に声をかける。

「ほんっっとうに、目でも口でも煽ってくれますね……」
「目ならそっちのほうが強いじゃん」

 言いがかりだといわんばかりの口調で、頭から乱雑にシャツを被る。
 かわいいが、さすがにこの時期の上裸は寒いため奪い取った。

「それは俺のです」
「きゃー。ケダモノー」

 ケラケラと楽しそうにしている彼女の戯言をため息で吹き飛ばしたあと、彼女のシャツを被せてやる。

「あと、俺が強いんではなく、あなたが押しに弱すぎるんです」

 単純な火力勝負なら彼女のほうが絶対に強い。

「弱いこと知ってて容赦せずに勝ちに行くんだから一緒じゃん」
「……確かに?」
「人でなしが露呈するだけだから、ここは黙って私の言葉を享受しておけよ」
「……さすがに暴君がすぎませんか?」

 本当にああ言えばこう言う子である。
 最高か。

 今日もワガママな彼女がかわいくてかわいくてしかたがない。
 しかし、それはそれとして今日の彼女はやたらと煽りが強かった。

「……そんなにひどくされたいんです?」
「は? ヤダ」

 毛布ごと連れ去ってそっぽを向いてしまうから、慌てて追いかけた。

「ちゃんと優しくして」
「してるじゃないですか。だから離れるのは禁止です」
「ぐぇっ」

 ぎゅうぎゅうと抱き締めると、苦しそうに圧迫された声が彼女の口から漏れた。

「まあ、我慢しちゃうくらいならちゃんとぶつけてほしいけどね」
「……」

 逃げられない程度に腕を緩めたら緩めたでこれである。
 のんびりとあくびをかまして、彼女は眠る体勢に入った。

 ……本当に、言ってくれる。

 いくら無意識だろうが無警戒だろうが、ノーガードにも程がある。

「……やっぱり煽ってますよね?」
「違うっ」

 俺にだって我慢できることとできないことがある。
 抱きしめていた腕が控えめに膨らんだ胸に伸びたとき、手の甲をペシッと叩かれた。

「れーじくんにフラストレーション溜められるとロクなことにならないから、ちゃんと吐き出せって言ってる!」
「へえ? なら、ちゃんと吐き出しますから、最後までつき合ってくださいね♡」
「はあっ!?」

 俺の言葉に振り返った彼女の表情はギョッとしていた。
 今さら壁に寄って距離を取ろうとするが、所詮ベッドである。
 逃げ場などないに等しかった。
 ジタジタと抵抗する彼女の上に跨って、再びシーツの上に細い手首を縫いつける。

「ねえ、やめてっ。今日はもう無理っ……んンっ!?」

 容赦なく彼女の唇をさらって、治りかけた熱を昂らせた。
 俺の中の意地悪スイッチの強度をちょっとだけ上げて彼女に迫る。

 そして翌朝。
 キャパオーバーした彼女から口を聞いてもらえなくなった。

 彼女の無自覚も無防備も本当に罪深いと、認識を改めたできごとである。


『消えない焔』

10/28/2025, 3:23:39 AM