「夏の大三角ってどれだっけ?」
「え、あれっぽくない?」
空に指さして笑う君。
懐かしいね、とかそんなことを話しているといつの間にか花火は始まった。
きらきらと輝く瞳。
花火よりも眩しい笑顔。
揺れる綺麗な髪。
人混みに押されて触れる肩。
夏らしい水色の浴衣。
歩く度に聞こえる下駄の音。
全部に惹かれて、つい見とれていた。
不意に肩を叩かれて後ろを振り返ると、
「お待たせ~。花火始まったな」
屋台へ買い物に行ってくれていた親友が戻ってきた。
「えー、ありがとっ!」「何買ってきてくれたの〜?」
俺から離れ、親友に駆け寄ってく君。
つい嫉妬してしまう。
「……好きなんだけどな」
2人は会話してるのと、花火の音が鳴り響いていることで今の呟きは虚空に儚く消えただけだった。
なんとなく2人の距離が近い気がして、目を逸らした。
見ていられなかった。
邪魔をしないように1人花火を見る自分に嫌気がさしてきた頃、スマホの通知がピコンっと鳴った。
それはさっき交換した君からの連絡で。
「私、親友くんのことが好きだから、」
「2人きりにしてくれないかな?」
「お願い!」
という内容のもの。
可愛いスタンプとともに送られてきたメッセージに俺は静かに息をついた。
…まじか。
まだ話し込んでいる2人を一瞥して何も言わずにその場をあとにした。
「わかった」
そう君に送って会場から出たときに、丁度花火は終わった。
花火は恋みたいに儚く消えるなんて、
上手く言ったもんだな、と笑えてくる。
あの2人が結ばれませんように、なんて最低なお願いを心の中でしながら、ふと空を見上げると星が輝いていた。
「夏の三角形かよ」
ため息をついて苦笑した。
10/5/2024, 1:58:03 PM