小音葉

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悉くを攫い、あるいは踏み躙った嵐を憎んだ
いつだって理不尽に、強引に
お前が齎した偽りの安寧
祝福された世界、約束された未来
それは腐った果実のようなもの
お前の掌に滴る暴虐の色を知っている
善良な仮面の裏で、牙を剥く獣の顔を知っている
お前が喰らい尽くした肉の味を忘れるな

顔のない悪魔が咽び泣く
例え微風であろうとも、憎き嵐へ繋がるならば
屈辱すら砕かれる花になどなるものか
錆びた心臓から溢れ出す、咽せ返るような憎しみが
全てを滅ぼしてしまえるなら
ああ、けれどそれは結局同じこと

引き絞られる臓腑を連れて歩いた
まるで嵐のようだ
溢した涙が薙ぎ払う
静止の声は咆哮となって
連鎖する崩壊の中心で、お前はもう止まらない
人はそう簡単には変わらない

丸裸になった大地で並んで寝転ぶ
取り止めのない悪態と、たまに溢れる呆れた笑みが
きっと何よりも愛しかったのに
あと少し花が愚鈍であったなら
あと少し風が狡猾であったなら
滑稽な夢を振り払う、ヒヤシンスと春嵐

(風と)

5/1/2025, 11:38:30 AM