もんぷ

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遠雷

 もう8時だと言うのに窓から見える暗い雲は朝を全く感じさせない。おまけに不定期でゴロゴロという不穏な音が聴こえては止むを繰り返していてなんだか落ち着かない。せっかくの休み、新たに駅前に出来たカフェのモーニングに出かけようかなんて話していたのに。朝からゆったりと二人の時間を満喫しようとしていたのに、この仕打ちは許せない。最大限に暗くした画面で天気を検索すると、どうやら警報まで出ていたらしい。諦めにも近いため息が溢れ、そっと、まだ夢の中にいるその子の髪を撫でた。起こしたくは無いから、その真っ直ぐな黒髪に触れる程度に留める。ふと窓の外が光り、数秒経ってから音が聴こえる。光ってから音が鳴るまで時間があったからどこか遠くの方に落ちたのだろうと結論づけ、無意味にいじっていた携帯をサイドテーブルに置く。すると、感覚を失っていた左腕の上の重みが動き、寝起きの掠れた声が聴こえてきた。
「かみなり…?」
「ん、おはよう。そう。まぁ、そんな近くないから…」
言い終わらないうちにまた目を閉じたかと思えば、体勢を変えて自分にしがみつくように眠り始めた。雷が怖いとか言うような年齢でも無いし、普段から怖いものなしの彼女だから無意識の行動なのだろうけど何故だかとても嬉しくなった。優しい寝息をたてる眠り姫を抱きしめて自分も目を閉じる。こんな時間をくれたのだから、仕方ないし雷は許してやろう。

8/24/2025, 5:35:50 AM