たちばな

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「わぁ」
綺麗な子。思わず声が出てしまうくらい。彼女はだらんと舌を垂らして木にぶら下がっている。ぎしぎし、と風が吹くたびに彼女が揺れて、木が鳴る。ぎしぎし。これはきっと彼女の声だ。ぎし、ぎし。美しい、と思った。
「イケメン」と騒ぎ立てられる同級生にも、「かわいい」と有名な先輩にも、私は一度だって「美しい」と思ったことはなかった。顔の造形が良いことは分かる、けど、美しいには全くもって足りなかった。美しさが分からないことに、孤独にも似た感覚を抱いていた。
私の脳は、やっと美しさを知覚した。美しさは、目の前にある。
ぎしぎし。歪んだ声で、彼女は私に語りかける。きっとこれは運命だ。
私は彼女に手を伸ばす。世界で初めて出会った、美しいあなたに。

1/16/2023, 11:21:20 PM