四人がけのテーブルで、老夫婦は横並びに座っている。夫は新聞を広げ、それを横から妻が覗いて一緒に読んでいる。
紅茶が運ばれてきて、夫はそれをカップに注いだ。妻がそれを飲む。
棺桶には紅茶を入れてちょうだい。と妻が言う。
紅茶の葉っぱを入れるの? と夫が聞く。
うん、そう。
遺骨が紅茶の香りになりそうだね。
うん、あなたは紅茶を飲むたび、わたしを思い出すでしょう?
先に死ぬの、俺だし。そしたら金木犀を俺の棺桶に入れてくれない?
秋だったらね。
紅茶の香りが店内に広がっている。
10/27/2022, 10:37:07 PM