花影

Open App

歳を重ねて、この世で生きていくうちに、ふと思ったことがある。

自分は嘘が上手くなった、と。

きっかけは些細なことから。親に嘘をつき、先生に嘘をつき、友達にも嘘をついた。嘘を覚えてから今日に至るまで、バレたことはなかった。毒を食らわば皿まで、と言うのなら、自分が死ぬまで嘘は嘘のままでいようとした。

でも、それは叶うことは無かった。

『世界が終わる』

空想の話ではなかった。誰かが呟いたことでもなく、ゲームでありがちなことでもなく、ただただ残酷な真実がそこにあった。そんなの、誰だって信じるわけない。

しかし、国のお偉い様が立て続けに喋り、そして宇宙の映像が証拠を示すのだから信じる他なかった。信じざるを得なかった。それ以外、道がない。

〇月‪‪✕‬日。とうとうこの日がやってきた。明日になればこの世界は消えてなくなる。無論、人類も虫も建物全ても、だ。


「話ってなに?」

「俺さ、昔からお前にずーっと嘘ついてたわ。今になって言うことじゃないと思うけど、世界が終わるって聞いたら言った方がよかったかなって」

「……遅いよ、バカ」


なんて言われるから、思わず隣を見る。彼女は1つため息をついたあとに、最後の日に見るに十分な笑みを浮かべてこう言った。


「最初から分かってた」



2024/06/07
世界の終わりに君と

6/7/2024, 1:19:28 PM