望月

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《寂しさ》

 なにをしても、埋まらない。

 別に、友達がいない訳じゃない。
 親友と呼べる子だっている。
 勉強だって、最近はわかるようになってきた。
 部活動も、少しずつ上達してきた。
 新しい生活にも、漸く慣れてきたのだ。

 なのに、なのに——どうしてだろう?

「……寂しいっ……」

 気が付けば夜、涙が溢れるようになった。
 ふと、一年前の日々を思い返すようになった。
 あの頃のままでいられたらよかったのに、と強く願うようになってしまったのだ。

 苦しい、辛い、悲しい。
 そしてなにより、寂しくて堪らない。

 こうして空白のページを文字で埋めつくしたって、きっと、いつまでも心は満たされない。
 どれだけ本を読んでも。ゲームをしても。音楽を聴いても。アニメを見ても。漫画を読んでも。
 満たされることはなく、余計にその乾きを感じる。

 大好きで、家族のように身近で信頼できる親友。
 時に頼られ、頼らせてくれる女友達。
 馬鹿を言い合って一緒に笑う男友達。
 少しくらいふざけても、乗ってくれる先生。

 それから。

 僕を安心させてくれて、誰よりも一緒にいる時間が楽しいと思えて、軽口を言いつつもずっと側にいてくれて、会えただけで嬉しくて、大好きで堪らない、

 そんな君が、僕の見る景色のどこにもいないのだ。

 それが、酷く寂しかった。

「……会いたい」

 いや、違う。

「……声が聞きたい」

 贅沢なことは言わないから。

「……せめて、顔が見たい」

 君がどこにもいないということ。
 それが、僕にとっての『寂しさ』なのだ。

 今日も、埋まらない心に他の誰かの温もりを。

 そうして積もる寂しさに、目を背けるように。

12/19/2023, 12:03:31 PM