るに

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目を凝らして見えるのは
木漏れ日の跡。
木々が覆い茂って
木漏れ日は年々面積を減らしていく。
少し前までは
ここも広く途方もない草原だった。
木が、花が、
草に負けじと苗や種をまいた。
細く折れそうな木が大樹へと、
踏み潰してしまいそうな小さな花が大輪へと
各々が大きくなっていった頃
もうそこは草原ではなく
ジャングルのようになっていた。
栄養も光も
全て大樹と大輪に吸われてしまった草は
大きくならずに枯れていった。
私はここの草原が大好きだった。
だから環境監察官として
ここにいるのに。
あくまで監察官なので
私ができることは
現状をノートに書き留めるだけ。
草を蘇らせることも
木や花を減らすこともできない。
悔しい気持ちはもちろんある。
無力な自分の立場が
死ぬほど恨めしいこともある。
でも自然の摂理だと割り切れなければ
ここでは生きていけない。
"Good Midnight!"
生きていくために
草原を大好きな景色を殺す。
もうこんな世界いらないと思うほど
頭を抱えてしまう世界だ。

11/15/2025, 5:18:55 PM