紅黒零茜

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「お気に入り」

お気に入りの場所、景色、食べ物……人によって色々とあると思う。
例えば物語も、そのひとつに入るだろうか?
私が気に入っているのは、ただただ日常を穏やかに過ごす少女の物語。
特別素晴らしいことが起きるわけではないが、その逆に特別悲しいことも苦しいこともない。
小さな幸福を大切にする。そんな物語。
……でも、少女はその穏やかな日常に退屈している。
何か刺激はないものかと、彼女の世界からはみ出さない程度の距離感で“普通ではない”ことを探し求めている。
「私の欲しいものはどこにあるの?ねぇ教えてよ」
虚空を見つめながら、ぼやく少女の言葉がやけに重く感じ取れたのを覚えている。

2/17/2024, 11:29:30 AM