とある恋人たちの日常。

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 彼女が喜んでくれるのってなんだろう……。
 そう考えながら、今日の夕飯を用意する。
 
 この前、恋人から『なんでもない日だけれどプレゼント』という事で、コンパスをもらった。
 俺の仕事的に、コンパスがあると〝生き残る可能性〟が高まるからだ。それは彼女が俺に〝帰ってきて欲しい〟という気持ちが込められているのが分かって胸が熱くなる。
 
 今日は俺が非番で彼女だけが仕事だから、のんびりと買い物に行くと、無意識に彼女の好物がカゴに溢れていた。
 
 ……これなら出来合い物を買ってもいいし、夕飯に連れて行ってもいいんだけれど……。
 
 彼女が普段プレゼントでくれるものを思い出す。すると、高級な夕食に連れて行くとか、高いものをプレゼントをするとかじゃない。俺自身がなにかする必要があるかなぁと考えてしまった。
 
 それは彼女が俺にくれるプレゼントは、自分で作ってくれたものが地味に多いからだ。
 
 今日の夕飯は腕を振るおう。
 バイトでレベルを上げた程度の腕だけれど、彼女の喜んでもらえるものを用意したくなった。
 
 
 
「ただいま帰りましたー」
 
 夕飯の支度を一通り終えた頃、彼女が家に帰ってくる。いつものように、玄関へ足を向けた。
 
「おかえり〜」
「ただいまです、疲れましたー!!」
 
 言葉と同時に両手を広げた彼女が俺の胸に飛び込んでくる。
 
「おつかれ、おつかれ」
 
 抱きしめ返しながら、頬を彼女に擦り寄せた。
 しはらくお互いの体温を分けあってから、身体を離す。
 
「お腹すいた?」
「すきましたー!」
「夕飯、すぐ食べられるよ」
「食べますー!」
 
 彼女はすぐに洗面台に向かい、手洗いうがいをしに向かう。その間に俺は最終的な準備をした。
 
「わぁ!」
 
 ダイニングに来た彼女は口を大きく開け、目がきらきらと輝いていた。
 
「私の好きなやつがいっぱいー! 豪華ですー!!」
 
 パッと俺に視線を向けてくる。
 
「この前もらったコンパスのお礼」
「えー、気にしなくていいんですよ! 私があげたかっただけなんですから……」
 
 まあ、そう言うよね。
 
「でも、嬉しいです。ありがとうございます!」
 
 そう微笑む彼女の顔はとても……とても可愛い。
 
 ヤバいな。
 お礼のつもりだったのに、俺の方がいいものもらっちゃった。
 
 
 
おわり
 
 
 
二五五、わぁ!

1/26/2025, 1:59:23 PM