空から落ちてくる粉雪は街を白く染めていく。
吐き出す息は白く、寒さで手がかじかんでいた。
色とりどりのイルミネーション。
行き交う人々は足を止めず、足早に家路を急ぐ。
喧騒が聞こえず、世界から音が消えたような
錯覚に囚われた。
そんな、静寂の中心で、来ぬ人を待っている。
手の中には、着信を告げないスマホ。
確認するけれど、やはり連絡は来ていない。
信じたい。
いや、信じていたかった。
彼の心は、ここにあると思い込みたかっただけ。
(____帰ろう。無意味だ。)
雪で視界が悪い中、歩き出す。
そのさみしげな後ろ姿は、人混みの中に静かに紛れていった。
#静寂の中心で
10/7/2025, 1:01:02 PM