柊 蒼真

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#相合傘

【太陽】

放課後の昇降口、好きな人が何やら困っている様子で外を眺めていた。
今日の天気予報では夜から雨が降ると言っていた。
彼女は夜に降るならと傘を持ってこなかったらしい

彼女とは帰る方向が同じだし、仲良くなるチャンスかもしれない。
私は傘を片手に彼女に話しかけた。

「傘、1本しかないけど…入る?」

彼女は安堵の表情を浮かべたが、すぐにハッとして申し訳なさそうに私に一言
「いいの…?」
      と聞いてきた。

「もちろん」

私がそう笑顔で答えると、彼女の表情は明るくなり
太陽のような眩しい笑顔で
「ありがとう!」
       と言った。

帰り道、
彼女を私の右側を歩かせ、私は道路側を歩く。
当然、彼女が濡れないようにと傘を持っているから私の左肩はビショビショ。
車が通る時、水しぶきが足元にかかるので、ほぼ傘をさしていないみたいだ。

でも、そんなのはどうでもいい。
隣を見ると彼女がいる、とても近い。
彼女も時々私の方を見て話しかけてくれる。

目が合うと、ニコッと笑うので私の顔は赤くなる。
「可愛い…」

心の声が漏れてしまった。
そっと彼女に目をやると、彼女は手で口元を隠していたが、耳が少し赤くなっていた。
私は立ち止まり、彼女を見ずに言う。

「私、先行くね…!傘は持って帰っていいから!」

彼女に傘を渡し、家まで走る。
傘を持たない私に、雨は容赦なく打ち付ける。

傘を渡し、先に帰ったことを彼女はどう思うだろう嫌な奴だと思われていませんようにと願い走り続けようやく家に着いた。


翌日、昨日の雨がなかったかのように空は晴れた。だが、空と対になるように私の心は曇っていた。
昨日の帰り道で走りながら考えたことが頭から離れない。
彼女に嫌な奴だと思われていないだろうか…

だが、気にしていても仕方がない。
私は支度をして玄関の扉を開けた。

そこには、私の傘を持った彼女がいて私を見るなり駆け寄り、傘を渡して言った。

「傘、ありがとう。濡れずに帰れたよ」

それは良かったと思った瞬間、彼女に手を握られた突然の事に驚いていると、彼女は太陽よりも眩しい笑顔で私に言う。

「一緒に学校行こう!」

私の雲がかった心は、彼女の一言で雲一つない快晴になった。

6/19/2024, 9:43:54 PM