マクラ

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『生きる意味』

「生きる意味って何なんだろうな」

あたたかな陽光の中、少し微睡んでいたせいかもしれない。
こんな言葉がこぼれたのは。

「生きているだけで素晴らしいのですよ」

すかさず、側で控えていた執事型アンドロイドが答えた。
そりゃそうだ。
アンドロイドは人間に使役されるためだけに作られた存在で、人間を何より尊重する。
そういう風にプログラムされている。

「お前たちからしたら、そうかもしんないけどさ……」

アンドロイドたちの生きる意味は、人間のため。
そんな奴らに聞くのが間違いだ。

(オレの生きる意味は……)

医者に余命宣告をされた時は絶望した。
まだ20歳にもなってないんだぞ。
やりたいことなんか山ほどある。
親や医者に当たり散らした。
それでも現実は変わらずに、ただ日々体調の変化に怯えている。

(何かあったのかな)

死ぬことが怖かった。
だから親や医者に無理を言って、コールドスリープを望んだ。
今は治せなくても、治せるようになる未来に賭けた。
でもオレは賭けに負けた。

「そろそろお部屋に戻りましょう、お身体にさわります」

アンドロイドがそう言って、オレの車椅子を動かす。
もはや抵抗もできない身体では、当たり散らす事もできない。

世界は滅んだ。
最期の人間が死んだ後、機械たちはコールドスリープで寝ている人間たちを起こした。
全て余命幾ばくもない人たちしか生きていない世界だ。
こんな世界に未来はない。

(こんな事なら、親や医者、友人たちに看取ってもらった方が幸せだったんじゃないか)

もはや遅すぎる後悔とともに、親と子孫たちの墓をあとにした。

4/27/2024, 1:12:42 PM