「距離(創作)」
「今週の日曜日、草野球の練習試合なんだけど応援に来てくれない?」
「え?いいの?行きたい!」
その日を今か今かと待ちわびて、差し入れの弁当を作って、いそいそと試合が行われるグランドに向かった。
到着した時は、1回の表。
少し離れたフェンスから、バッターボックスに立つ彼に小さく手を振った。彼はすぐに気がついてくれて、こくりと小さく頷いて、試合に集中する。
カキーンとボールの中心を捉えた音が鳴り響いた。
「やった!」
思わず大きな声を出してしまって、口に手をやって肩を窄めた。
「パパー!ホームラーン!!」
「すごいね、パパ!」
甲高い子どもの声と、女性の声がした方を振り向くと、彼に向かって2人が笑顔で手を振っていた。
私と2人の距離は、そう離れていない…
その声に気が付かないはずもなく、彼も振り向いて2人に手を振り返したあと、私とバッチリ目が合ってしまった。
どういうこと?
私と2人の距離は、そう離れていない…
12/1/2024, 11:47:11 PM