かたいなか

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世はゴールデンウィークの真っ只中だそうですが、普通に明日も明後日も、その次の日も普通にお仕事の物書きです。
優しさ?思いやり?知りません。優しさだけで、きっと懐は温まらないのです(早々のお題回収)
と、いう慟哭は置いといて、今回のおはなしのはじまりはじまり。

最近最近の都内某所、某隠された小道の奥に、
食べログにもグルメマップにも記載が無い、本物の魔女が切り盛りする喫茶店がありまして、
美味しいスープを煮込む大釜も、温かい光をこぼす鉱石ランタンも、全部ぜんぶ、本当の魔法道具。

中でも、差し込む鍵によって音色を変える魔法のオルゴールは、周囲から特定の感情だけを集めて、
いろんなフレーバーのシュガーを精製するのです
が、
その日の魔法のオルゴール、どうにも調子が良くありません。完全に、ヘソを曲げています。

「ヘンね。とても、ヘンだわ」
店主の魔女のおばあちゃんは、首を傾けました。
「どの鍵を差し込んでも、同じ曲しか流れないし、同じ感情の味のシュガーしか出てこない」
その同じ曲、同じ感情の味こそ、まさしくお題そのもの。「優しさ」でした。

「いたずらネズミにでも、かじられたかしら」

やめろ!冤罪だ!ボクじゃない!ギーギーギー!
喫茶店の椅子をカジカジしていた不思議ハムスターをお仕置きして、
魔女のおばあちゃんは手っ取り早く、オルゴールを直してくれそうなエンジニアに連絡です。

『あ?例のオルゴールが壊れた?』
エンジニアはミカンが大好き!
魔女おばあちゃんが手作りのシトラスティーを、それとなくチラチラさせると、
エンジニアは秒で飛んできました。
「おう俺様にまかせろ。で 何だって?」

トントントン、こんこんこん。
整備用拡大メガネを付けたエンジニア、優しくオルゴールの外枠を外します。
「音を鳴らす機構は、特に、なんともねぇな」
柔らかいブラシとクロスでチリを取り除いて、
少しだけオルゴール用に持ってきた油をさして、
エンジニアはたちまち、オルゴールのトラブルを発見しました。

「コレだ」
それは、鍵穴に入り込んだシュガーの塊でした。
「『いまオルゴールにどの鍵が差し込まれてるか』を読み込む機構に、シュガーが挟まったんだ」

その挟まったシュガーが特定の鍵のカタチ、優しさのカタチに圧縮固着しちまって、
結果として、優しさだけで、きっと感情採集が為されてたんだろうなぁ。
エンジニアは鍵穴にメンテナンス用の針を差し込んで、コンコンコン。
鍵穴から原因のシュガーを取り出して、ひととおり、お手入れなど為したのでした。

「問題は、なんでシュガーが鍵穴に入り込んだかなんだわな。 なんでだろな」

まぁ、ちょっくらこの俺様に預けろ。
エンジニアは綺麗な木箱にオルゴールをしまって、
手入れの前金として、魔女おばあちゃんからシトラスティーの1箱を受け取ります。
優しさだけで、きっと鍵穴の読み取り口が固着していたオルゴールは、それから2日もせず、
綺麗にお化粧も直されて、おばあちゃんの喫茶店に戻ってきたそうな。

5/3/2026, 3:05:35 AM