「雨に佇む」
この前雨の中深夜徘徊してた時の話。
なんとなく寝られなかったから家の近くをうろうろしてた。
ただ暗いだけで、別にいつもと何も変わらない。
ただ暗いだけなのに、見慣れた場所が不気味に見えるんだから不思議だ。あの生垣から手がにゅっと、とか、やたら背の高い女が追いかけてくるんじゃないか、とか、つい考えてしまう。
いやいや、いつもの道なんだから。自分にそう言い聞かせた。
でもやっぱり少し怖かったからもうすぐ帰ろう。
そう思って道端を見た。
そしたら、細い道が見えた。こんな所に道なんかあったか?と思いつつも何故か足が止まらない。好奇心のせいか、それとも導かれたからなのかも分からない。
その道はすぐに開けた。その先には、雨に佇む地蔵がぽつり。
古そうだがかなり立派だ。その上手入れも行き届いている。
多分悪いものじゃないんだろう。
せっかくだから、願い事でもしていくかな。
“みんなが健康に過ごせますように”
無難だけど悪くない願いだと我ながら思った。
次の日、夜の雨が嘘だったかのようにカラッと晴れていた。
そういや、あの地蔵は一体何だったんだろう。
ちょっと気になったからまたあそこに行ってみることにした。
ここを左に曲がって、たしかこの辺に───あれ?
あの道が、ない。
道を間違えたか?いや、確かにこの信楽焼のたぬきの家と朝顔が植えてある家の間に道があったはずだ。
一体どういうことなのだろうか?
自分は気になったことを放って置けない性分だから、隙を見つけてはあの地蔵を探した。
もしかしたら周辺住民から不審者だと思われてるかもだけど。
地蔵は現れたり現れなかったりした。
やっぱり意味がわからない。
だが、色々試しているうちに分かったことがある。
地蔵は時間関係なく、雨の日に現れる。
願い事をしたら、時間を空けて変な形で叶う。
それから───願い事をする度に少しずつ道が短くなる。
自分は、地蔵が道の表面に出てきたらとても危険なように思えた。何故だかはわからない。でも、本能か第六感がそう言っているんだ。もうやめておけと。
だから、自分は雨の日にあの辺りに近づくのをやめた。
8/28/2024, 10:25:15 AM