たやは

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泣かないで

12月に入るころ、志望校のランクを1つ上げたいと担任に言った時、担任は辞めた方がいいと否定的だった。
それでも、家の経済事情を考えると私立の高校には行けないと思った。
10才の時に父が亡くなり、母と弟と私の3人での生活が始まった。母は毎日、遅くまで仕事で家にいることがなかったため、学校から帰ってくると弟は洗濯物をたたみ、
私は夕食を作り母を助けていた。私は家事をやりながらそれなりに勉強していたが、学力足りず、県立高校には行けないと思っていた。母にもそう言ってあったし、母も納得していると思っていた。

三者面談の時、委員会のため私だけ遅れてしまい、担任と母の話しを立ち聞きしてしまった。いつも笑顔の母の悲しそうな声が聞こえてきた。

「県立は無理ですか?県立に入れるように指導して下さい。私立はお金がかかる。」

「お母さん。気持ちは分かりますが、娘さんは県立の偏差値に達していませんよ。」

「でも、でも。先生何とかして下さい。
私たち生きていけなくなります。」

母は泣いていた。
私が始めて見た母の姿だった。それに生きていけないってどういうことだろう。
あとで分かったが、父には借金があり、母が返済していたのだ。

私は何も知らなかった。母を手伝っている気になっていただけたった。

「お母さん。私。高校行かないで働く」
「え?何言ってるの」
「だって、家、お金ないでしょ」
「辞めなさい。大丈夫よ。」

母は私が中卒で働くことを許してくれなかった。私に残され道は県立高校に行くことだけだ。

「みっちゃん。勉強教えてくれない。どうしても県立高校に行かないとならないの」

「勉強。いいけど。どうした。」

幼馴染のみっちゃんの学力は学校で1番だ。理由を話し、一緒に勉強を始めた。

毎日夕食を作り、3人で食べて片付けをして8時から12時まで勉強をした。休日はみっちゃんと図書館で1日中勉強をみてもらった。

「ごめんね。みっちゃんの邪魔して」
「いいよ。私の復習にちょうどいいしね」

試験当日は寒い日だった。
朝から落ち着かなっが、試験会場で椅子に座ると不思議と落ちついてきた。やれることはやった。大丈夫だ。

「おーい。試験どうだった〜。」

「みっちゃんは大丈夫そうだね。私も頑張ったから大丈夫だよね。」

「当たり前じゃん。」

試験結果は合格!
私は県立高校に合格した。

「やったねー。やった。良かったよ〜。
うれしい。うれしいよ〜。」

「なんでそんなにみっちゃんが泣いてるの。泣かないでよ。」

「だって、だって。うれしいんだもん。
凄く頑張ったの知ってるしうれしいよ〜」

私のために「良かった」と泣いてくれる友人がいてくれる。合格できたことは勿論うれしいが、合格を一緒に喜んでくれるみっちゃんがいてくれたことが1番うれしい。

みっちゃんとは別の高校になってしまったが、今でも1番の親友だ。

11/30/2024, 2:01:28 PM