もか

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『カーテン』

AM 6:08

俺は、パソコンの前で伸びをした。
カーテンの隙間から差す朝日が鬱陶しい。

徹夜明けで気怠い体を横たえる。
レポート提出したし、もう少し寝るか。
そう思って、目を閉じた時。

ピンポーン

家のインターホンが鳴り響いた。
こんな時間に誰だよ。

まあ、家に来るやつなんて一人しかいないけど。

はーい、といかにも面倒そうに返事をした。

扉の向こうから、聞き慣れた関西弁が答える。

『邪魔するでー』
「本当に邪魔だから帰れ」

こいつはほぼ毎日、俺の家の前に現れる。
来る時間はバラバラ。
今日みたいな早朝や、ド深夜でもおかまいなしだ。
こんな非常識なやつと友達になった覚えはない。
でも何故か、いつも一緒にいる。

不思議なやつ。

今日もこいつは案の定、勝手に家の中に上がりこんできた。
しかし何をするでもなく、気まぐれに寝転がったり、スマホを眺めていたり、時にちょっかいをかけてきたりする。

お前、なんのために来てんの?とたずねても、いや別にー、とはぐらかされた。

ふと、そいつは窓の前に立って、カーテンを開ける。
眩しい朝日が、暗い部屋の中を照らした。

「おいやめろよ、俺が明るいの嫌いなの知ってんだろ」

部屋着のフードを深く被って抗議する。

でもそいつは、『こんな暗い部屋にいたら鬱になるで』
と笑いながら返すだけ。

嫌なやつ。本当に、鬱陶しい。

鬱陶しいけど、今は何故か。

部屋の中でキラキラと輝く日差しと、その光の中で屈託なく笑うそいつの笑顔が、少しだけ眩しく見えた。



10/12/2024, 12:35:12 AM