【冬は一緒に】
春も夏も秋もおまえとは顔を合わせるけれど、冬は格別だ。ほとんど毎日のように訪ねてきては、かなりの頻度で泊まっていく。仕事帰りのおまえが黒くて重いコートに身を包み、来ちゃったと笑う頻度が重なってくると、ああ今年も冬になったのだなと実感するのがもはや風物詩だった。
互いに口には出さないけれど、木枯らしが冷たい空気を運ぶ季節になるとおまえが俺のもとを訪れるのは、きっとおまえが寂しいからで、俺が寂しいとおまえが思っているからだ。俺の姉でありおまえの恋人だった彼女が死んだ、あのどうしようもなく寒い雪の日を思い出さずにはいられないから。
「今日は鍋にしようよ。具材は買ってきたからさ」
「量がおかしい。そんなに食べ切れるか」
「余ったら明日も食べればいいじゃん」
なるほど、今日は泊まっていく気だな。小さくため息を吐きながらキャベツを手に取った。
ぽっかりと開いた心の穴を補い合うように、慰め合うように、冬になると二人きりで身を寄せ合う俺たちを、天国へと旅立っていった姉はどんな風に思っているのだろう。その答えは俺にはわからない。わかるのはただ、こうして身を寄せ合わなければ俺たちは生きてはいられないということだけだ。
冬は一緒に、寂しさを分け合って。そうして俺たちはいつか訪れる春を、二人で待ち望むのだ。
12/18/2023, 9:55:50 PM