冬至。

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「大切なものはひっそりしまっておかなければならないよ。じゃないと誰かに取られてしまうからね」
誰だかその昔そんな事を言っていた。
本当に閉じ込めて誰にも見せれなく出来たらどんなにいいか。

俺はキレイなものが好きだ。
だから男でも女でも関係ない。
ある日突然、俺の前に現れたあいつは女の姿をしてた。
前を通り過ぎるあいつに目が惹きつけられて思わず声を掛けていた。
今思うと一目惚れだったのだろう。
あいつも俺の誘いに乗ってきてその足でバーに向かった。
軽く飲むつもりが楽し過ぎて飲み過ぎてそのままの流れでホテルになだれ込んだ。
あいつが男なのは飲んでる時に聞いた。
普通は隠しそうなものなのに潔い。
そこも気に入った。
ホテルに入っていざ行為に及ぼうとしたその瞬間「ごめん!!」と突然拒否された。
あいつは自分のマイノリティに悩んでた。
自分を着飾るのは好きだ。
だけど恋愛対象が男なのか女なのか分からなかったそうだ。
もの凄くすまなそうに謝り続けるからこっちも申し訳ない気持ちになって、それから友だちになった。
一緒に過ごしてみると外見は申し分無く好みなのだけど、性格も自分とすごく相性がよかった。
一緒に居て心地良かった。
あれから5年。
今日も俺の隣りできらきらと輝いてる。
「なんだよ」
「なにが?」
「ニヤけてこっち見てて気持ち悪りぃ」
「ごめんごめん。今日も可愛いなぁって」
「当たり前だろ。俺は美しい」
にやりと笑いかけて来る。
「はいはい。お前は世界一美しいよ」
俺も笑いながらそれに応える。
あいつの顔を下から見上げてにんまり笑って。
「あの子とはどーなったの?」
語尾をわざとらしく上げる。
最近気になる女の子がいるらしい。
「どーにもなってないよ!!」
可愛らしく頬を染めてぶっきらぼうにそう言い放った。
あーあー耳まで真っ赤だ。
そいつが恨めしいよ。
こいつの顔を赤くするのは俺でありたかったのに。
「俺でホテルで試したくせに」
「それはごめんて!!」
ポツリと恨めしく呟くと逸らされていた目線がまた俺に戻って来て謝って来る。
「俺は今でも好きだけどねー」
「はぁ?それは嘘だろ」
何で通じないかなー。
なんであの子がいいのかなー。
本当に閉じ込めて俺だけのものにしたい。
それからずっと抱きしめて離さないのに。
でも無理だもんなー。
しまっておくのは難しいよ。
いつまで隣りに居られるのかなー。
隣りに居るあいつの顔をそっと見つめてぼんやり想った。



                👠(大切なもの)

4/3/2026, 10:10:30 AM