落下
リンゴ、ころがって、落ちて落ちて落ちて
リンゴ、ころがって、落ちて落ちて落ちて…
こつん、と、靴に当たった。
リンゴが落ちるのを見ていた人間が、靴に当たったリンゴを拾った。
「リンゴは、どうやって木から落ちたのだろう」
人間が呟いた。
だからリンゴは答えた。
「重くなったから ひとりだち したのさ!」
「おどろいた。リンゴは、しゃべるのか」
「人間だって、しゃべるでしょう!」
「ああ、本当だ。でも、リンゴには、口が無いのに、しゃべるのか」
「どうして、人間とリンゴの『口』が同じだと思うんだい!」
人間は、少し考えて、ははあ、と頷いた。夢を見ているのかもしれないと思った。
「きみは、面白いリンゴだね。向こうでゆっくりお話しないかい?」
「お話する時間はたっぷりとある!いいよ、お話しよう!」
「ありがとう。あー、ええと、人間相手ならお茶を出すところだけれど、リンゴには、どうすればいいのだろう?」
「お茶はいらないよ、でも、そのうち、種を植えておくれよ!あまり暑くなく、けれど陽当たりがいい場所に!」
「そうか、ようし、そうしよう。ではリンゴさん、行こうか。きみと話せば、色んなことに気がつける予感がしているよ」
これは、リンゴの落下を見て気がついた人のおはなし。
6/18/2024, 12:21:42 PM